「ソニー」の型通り 「アップル」の型破り。

ロゴマーク(デザイン)の大切な役割は、
人々に会社の「価値」を「発見(評価)」させること、
さらに、社会的に認知(理解と記憶と想起)されること、
つまり評価を確立させることにつきます。

その実現方法は、大まかにいえば
「連想」と「創見」の二つの手法に分けることができます。
「創見」とは「独創的な見解」のことで[見方(解釈)を創る]ことです。
この「連想」と「創見」の二つは、「型通り」と「型破り」の違いがあるといえます。

中小企業でありながらも、世界を相手にビジネスを展開するために、
1958年、ソニーは、「SONY」という「連想による解釈」を創っています。
当時、日本製品が安かろう悪かろうといわれる世界のなかで、
自社製品を売り広めるために、自分たちの会社の魅力に相応しい
クリエイティブ・イメージ(創造的変化の起点)として熟考されたものです。
その成果は、かつてアメリカでは、ソニーアメリカの会社だと
解釈する人が多かったことからも理解できます。

こうした手法は、「プリフレーム」といえるものです。
触れる前に、認知内容を端的に解釈させるための刺激や、伏線を対象者に
与えることです。例えば、机の上の白い布を、ふきんと呼べば「ふきん」に、
雑巾と呼べば「雑巾」として扱われるものです。

しかし、目にうつる白い布が、ふきんではなく雑巾の形をしていたら、
雑巾が、ふきんの形だったら、人は素直に納得したりしません。

ソニーの「SONY」はネーミングの巧みさが際立っていますが、
ロゴマークとしても、その造形(デザイン)は、
当時の欧米の人々に、その設定した「解釈」を浸透させる説得力がありました。

特に成熟社会に生きている今の人たちは、目が冴えています。
ゆえに、こうした視覚の説得力、浸透力(デザインの創造性)は、極めて重要です。

さらに、世界経済の中心ニューヨーク・五番街というシンボリックな場所に
ソニー・ショップを、また、斬新なテレビCMなどを、「SONY」の印象づけ(連想)の
担保として使っています。それらは、人々の解釈を強化・上書きできる
優れたコンタクト・ポイントだからです。

ようするに、優れた場所に提示するから、
提示した「ロゴマーク」が優れたものとして見えてきます。
それが転じて、その「ロゴマーク」が付いている製品だから優れていることに
つながっていきます。このような「連想」を意識的に使って、
目に見えない会社の評価(解釈)を貼付け、イメージ・アップを実現し、
ソニーは、みごとに「SONY」を育て上げました。

もちろん、その評価の基本的な担保は、画期的なソニー製品ですが
SONY」(のロゴマーク)に、評価を貼付ける情報の蓄積(ストック)化が
あることで、評価の確立を早める「触媒の働き」を果たしてくれます。

「触媒」とは、まったく反応しないものや、
ゆっくり反応するものを、加速させるもののことをいいます。

以前、NHKの人気番組であった「プロジェクトX 挑戦者たち」の
テーマソング「地上の星」を聞くだけで、突然、目頭が熱くなって
困るという人たちがいたのをご存知でしょうか。
それは、番組を見れば見る程、涙腺がゆるむ感動の名シーンで、
流れるテーマソング「地上の星」を、何度となく繰り返し聞いてしまうことが
原因です。その結果、具体的な物語やシーンを思い出すわけでもないのに、
その曲を聞くだけで、理由もなくダイレクトに目頭が熱くなる結果が現れます。

これも、情報の蓄積(ストック)化の一例です。
いつの間にか、しかも知らぬうちに、私たちの心に貼り付いているもの(解釈)があり、
私たちはそのことに気づくことがありません。

ゆえに、連想法は、ある意味、恐ろしいものです。

ちなみに、その「SONY」の由来は、音(SOUND)の語源となった
ラテン語のソノス(SONUS)と、SONNY(やんちゃ坊主)を掛け合わせた言葉です。

多くの会社のロゴマーク・デザインも「SONY」のような「連想のデザイン」です。
この「連想のデザイン」は、評価につながる明確な解釈ではなく、
印象的な連想を主軸に考えられています。なぜならば、ロゴマークの印象力と、
ロゴマークに貼付け続ける情報力(蓄積力)によって、
顧客や人々との関係を成立させていくことが基本にあるからです。

これは、ソニーの時代では斬新でも、現代においては、多くの会社で採用されている
スタンダードな手法で、誰でもが考える、あえていえば「型通り」のデザインです。
しかし、その後の肝心な情報の蓄積化(ストック化)、ベーシックな連想法を、
多くの会社はなおざりにされています。

せっかくデザインしたロゴマークが効かない一因が、そこにあります。

その対極に、アップルの「齧られた林檎」が存在しています。
それは「型破り」なデザインです。
(事業に対する)独創的な見解、「創見(Vision)のデザイン」のロゴマークです。

アップルの公式見解がありませんが、その由来は旧約聖書「創世紀」の物語です。
その物語は、禁断の知恵の実である林檎を食べたアダムとイブが、
エデンの園から、「神によって追放される」ネガティブな内容ですが、
むしろ、「支配からの開放」だというポジティブで独創的な見解(創見)が、
そこにはあります。

それは、テレビCM「1984」が分かりやすく、
その内容(解釈)を発見させてくれます。

テレビCM「1984」は、1984年、世界初の画期的なGUI(グラフィカル・ユーザ・
インターフェイス)、つまりアイコン&マウスのMachintosh(略称Mac)、
発売告知のテレビCMです。ユーチューブの動画をご覧ください。

このCMは、ジョージ・オーウェルの警鐘小説の「1984」をベースにしています。

IBMを想定した管理社会の恐怖と、それを打破する内容です。
当時、世界は巨大なメインフレームと呼ばれる汎用コンピューターの時代で、
それによって、既存体制は、人々を一元管理(支配)するのではないかという
イメージが、SF映画やコミックなどの影響で定着していました。

パーソナルコンピューターは、反権力・反管理として位置づけられており、
その既存の解釈の流れを利用して、アップルは自身を「覚醒(開放)」をうながす
反権力・反管理の旗手(救世主)として描いています。

3大TVネットワークや、新聞・雑誌の多くのメディアが、
この斬新なテレビCMに注目し、社会的な話題として、
人々から一気に注目されることにも成功しています。

このことで、アップルのロゴマーク「齧られた林檎」は、
単なる「優れたコンピュータ会社」を超えた意味、価値を産みだし、
競業他社とは違う次元にアップルを存在(解釈)させました。

こうした働きをもつのが、「創見(Vision)のロゴマーク」です。

アップルは、パーソナル・コンピューターという便利な道具という
単なる「手段」を開発したのではなく、
既存体制に支配された世界を、デジタルで個人に開放し、
私たちの豊かな生活や、私たちの可能性を開くという
創造的な「目的」を発見しています。

あらゆる世界において、プロフェッショナルとアマチュアの垣根を低くし、
情報の支配的な送り手であった新聞の凋落、テレビでは地上波離れが進んでおり、
逆に、一個人でもネットで生放送ができたりします。
「支配からの開放」、この「解釈」は、デジタルやネットで起きる私たちの変化、
情報革命を、的確に要約しています。そして、今、起きている
「中東のネット革命」は、まさに支配からの開放です。

つづく・・・・・・・



<特集記事>
なぜブランディング・デザインで失敗する会社が多いのか
http://www.axle.biz/vi_brand_design.html


<制作事例>
ロゴマーク事例が下記のアドレスにあります。
●EAPサービスの事例
●フレームワーク社の事例


by Axle
http://www.axle.biz



 
ブログランキング・にほんブログ村へ
にほんブログ村


人気ブログランキングへ