会社における「目的の創造性」と「組織のメカニズム」

 
プロダクトデザイナー、ハリウッド映画のコンセプトデザイナーで
有名なシド・ミード氏は、あらゆるものに先立ってあるのがコンセプトで、
「コンセプトからアイデアが生まれる」といいます。
彼のような優れた「コンセプト」のデザインは、
多くの人々の考え方を書き変えてしまう力があります。

彼が、1982年、SF映画ブレードランナー」で、常に秩序だった美しい未来都市像を、
環境汚染による酸性雨が止まない猥雑な未来都市として描きだすと、
そのコンセプト(解釈)はすぐに浸透し、
その後のSF映画の未来都市の姿を決定づけてしまいました。
それは今だに、未来都市のビジュアルアイデアを触発するコンセプトです。


(2012年公開の「トータルリコール」にもその影響が現れています。)

同じようにビジネスにおいて、鉄道事業で、様々なアイデアを産んだのが
小林一三ですが、コンセプトとして働いたのが、「乗客は電車が創造する」という
鉄道事業の解釈です。この解釈であるコンセプトが、沿線の宅地開発、
終点に動物園や、宝塚歌劇団、そして駅ビルの百貨店という
イデアを産み、いまの阪急グループが誕生しました。
そして、その後の私鉄経営モデルを決定づけています。

このように、「アイデア」は「コンセプト」から産まれます。
それは、いままで「目的(解釈)の創造性」として述べてきたものです。
分かりやすくするために「コンセプト」をいいかえて説明してきました。

このコンセプト(Concept)という言葉は、
Conceive(孕む)、conception(考えること、受胎)と、同根の言葉です。
心に、新しい意識(考え方)を孕(はら)ませ、
(その考え方で新しい可能性が見えれば見えるほど)新しい知恵と意欲を触発し、
新しい行動や成果を出産(現出)させる、という意味だといえます。

このようにコンセプトとは、創造性の母胎のようなものです。

日常の生活、人生のなかで、誰でもが、コンセプトを経験しているものです。
ごくありふれたものですが、コンセプトという捉え方、
解釈をしないために、私たちはまったく無自覚であって気づかないだけです。
声優の大山のぶ代さんの場合(ページ中程にあります)も、
母親によって創造的な変化(行動というアイデア)を
自発するコンセプト(解釈)が与えられています。

このコンセプトは、
会社という組織のマネージメント(発想と行動のプログラミング)としても働きます。
会社経営にとって、重要なメカニズム(仕掛け)になります。

こうした組織のマネージメントの「コンセプト」で
有名なものに東京ディズニーランドがあります。それは「夢と魔法の国」という
コンセプト(自己解釈)で、提供されるもの(心理的な価値)は
「ハピネス(幸福)」です。

そのコンセプトから産まれたアイデアのなかでも
有名なのが「キャスト(役者)」です。

社員も、アルバイトも、「キャスト(役者)」と呼び、
お客さまは「ゲスト(賓客)」と呼びます。そのゲストが楽しむ場を「オンステージ」、
倉庫やオフィスを「バックステージ」、その制服は「コスチューム(舞台衣装)」など、
すべて舞台用語で統一されています。

なぜならば、東京ディズニーランドは、「コンセプト」を、
キャストと、ゲストが、出演する「夢と魔法の国という現実の映画」として、
定義しているからだといいます。

ゲスト(お客さま)に「何をしているの?」と聞かれると、
カストーディアル(というお掃除)キャストは、
「みなさん、楽しい思い出をたくさんつくってらっしゃいますよね。
 実は、パークに落ちている思い出のかけら(ゴミのこと)を拾ってるんですよ」と
答えるといいます。これは、教えられたものではなく、
キャスト個人が創ったもてなし(演出)です。(ディズニーの教え方、
福島 文二郎著より)


(こちらは、パフォーマンスをする特別なカストーディアルキャストです)

キャストは、ゲストに「ハピネス」で、もてなすという
創造的な目的(コンセプト)が与えられいるから素敵なアイデアが産まれてきます。

さらに、具体的な「カストーディアル」という解釈で、
一般的な「清掃係」とは違う振る舞いが産まれます。
その「カストーディアル(Custodial)」という言葉には、掃除という意味は
ありません。管理、保護という意味で、パークを清潔に管理する
ゲストを保護するという解釈なのです。

もちろん言葉(解釈)だけでなく、東京ディズニーランドには
優れたOJT(On the Job Training)があり、キャストの創造性を支えていますが、
清掃係という解釈(姿勢)では、上記のような素敵なもてなし(演出)は
産まれはずもありません。

コンセプトは、人の創造性を自発させる魔法ですが、
現実や常識も、人の力(可能性・創造性)を閉じ込めてしまう魔法です。

東京ディズニーランドは、「あらゆる年齢のこども」のために、
「勇気と冒険」、そして、「ドリームズ・カム・トゥルー(夢は叶う)」が、
核心にあります。人々にとって、何が本当に素敵なのか、
何が本当に大切なのか、という洞察があるからこそ、必然的に、感動(感銘)が
産まれてくる構造が、ゲストにも、キャストにも仕掛けられています。

また、ゲストが「夢と魔法の国」にいるという心理モードをつくるために、
東京ディズニーランドのアトラクションなどの背景のセットでも、
細部にまで気を配っていることは有名です。

映画の中に迷い込んだ気分(楽しい気持ち)を、背景が、ゲストにもたらします。
「ここは魔法の国ですよ。」と、背景に語らせています。
東京ディズニーランドは、背景にもコンセプト(目的意識)の定義が浸透しています。

そこに、すべてが、「コンセプト(夢と魔法の国)」に集約する、
「コンセプト中心思考」があります。ビジュアル・アイデンティティも、
同じメカニズム(仕掛け)をもっています。

ロゴマークのデザインだけでなく、
名刺、封筒、車輛、サイト、広告などのアプリケーション・デザインと呼ばれるもの
までを、会社のアイデンティティを浸透させてデザインするのが、
ビジュアル・アイデンティティのメカニズム(仕掛け)です。

つづく・・・・・・・


by Axle

 
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